テスラ(Tesla/TSLA)の2026年第2四半期決算が発表されました。
今回の決算を一言で表すなら、「ぱっと見はかなり悪い。しかし中身を見ると、テスラが本格的にAI・自動運転・ロボティクス企業へ移行していることが分かる決算」だったと私は考えています。
特にネガティブだったのがEPSです。
テスラが公表しているアナリストコンセンサスでは、非GAAP EPSの予想は0.55ドル。
それに対して実績は、0.33ドルでした。かなり大きな未達です。
一方で、
- 売上高は市場予想を上回る
- 自動車販売はQ2として過去最高
- FSDサブスクリプションは前年比56%増
- Robotaxiの展開地域が拡大
- Cybercabの生産開始
- Optimus生産ラインの建設開始
- AI・ロボティクスへの設備投資を大幅増加
と、将来のテスラを見るうえで重要な部分は着実に前進しています。
今回は、数字だけを見ると悪く見えるテスラQ2決算を、中長期投資家としてどう考えるのか整理していきます。
テスラQ2決算をまず数字で確認
今回の主要数字はこちらです。
| 項目 | Q2実績 | 市場予想 |
|---|---|---|
| 売上高 | 282.4億ドル | 275.8億ドル |
| 非GAAP EPS | 0.33ドル | 0.55ドル |
| 自動車売上 | 205.2億ドル | 200.5億ドル |
| エネルギー売上 | 31.4億ドル | 37.7億ドル |
| 営業利益率 | 1.4% | 5.4% |
| FCF | ▲10.9億ドル | ▲32.5億ドル |
| 設備投資 | 57.9億ドル | 67.0億ドル |
売上高は予想を上回りました。しかし、利益が予想以上に残らなかった。これが今回の決算で最も大きな問題です。
一番のネガティブ材料はEPS「0.33ドル」

今回、私が最もネガティブに感じたのはEPSです。予想0.55ドルに対して、実績0.33ドル。約40%の下振れです。
では、なぜ売上高が予想を上回っているのに利益がここまで悪化したのでしょうか。
大きく分けると、
①粗利益率の悪化
②AIなどへの経費増加
の2つが大きかったと考えています。
テスラ全体のGAAP粗利益率は16.8%。市場予想は19.5%でした。
さらに営業費用は前年同期比47%増の43.5億ドルまで増加。
その結果、営業利益はわずか3.98億ドルとなり、
営業利益率は前四半期の4.2%から1.4%まで低下しました。
エネルギー事業の利益率が急低下

特に大きかったのがエネルギー事業です。
Q1 2026では、エネルギー事業の粗利益率は約39%ありました。
しかし今回のQ2では、20.4%まで低下しています。
ほぼ半分です。
エネルギー事業の売上高についても、市場予想37.7億ドルに対して、31.4億ドルにとどまりました。
一方で、エネルギー貯蔵製品の導入量自体は13.5GWhと前年同期比41%増えています。
つまり、「Megapackなどが売れていない」というより、導入量ほど売上・利益が伸びなかったというところがポイントです。
単純に「1パックあたりの販売価格が下がった」と断定することはできません。
製品構成や地域構成、売上計上のタイミングなども影響するためです。
ただ、導入量が大きく伸びている一方で売上高の伸びが13%にとどまったことを考えると、価格や製品ミックスによる収益性の低下は今後も確認していく必要があります。
さらにテスラは、エネルギー事業についてサプライヤーのセルに関連した保証費用の増加も利益率低下の要因として挙げています。
エネルギー市場そのものはAIデータセンターなどによる電力需要増加という非常に大きな追い風があります。
その一方で、競争激化によって価格競争が起これば、「売上は伸びるが利益率は下がる」
という可能性もあるため、ここは今後の決算でも注目していきたいところです。
もう一つの利益圧迫要因はAIへの巨額投資

もう一つ大きいのが経費です。Q2の研究開発費は、23.7億ドルまで増加しました。
前年同期の15.9億ドルから約49%増加しています。
テスラ自身も、営業利益悪化の要因として、AIをはじめとする研究開発プロジェクトへの支出増加を挙げています。
短期的な決算だけを見るなら、当然これはマイナスです。AI開発に10億ドル使えば、その分だけ今期の利益は減ります。
しかし私自身は、ここについてはそれほどネガティブには考えていません。
なぜなら、テスラが今まさにFSD、Robotaxi、Cybercab、Optimusという将来の主力事業を作っている段階だからです。
むしろAI企業を目指している会社が、このタイミングでAIへの投資を抑えて利益をきれいに見せる方が、長期投資家としては怖いと考えています。
設備投資は前年比142%増の57.9億ドル

そして今回、個人的に非常に重要だと思っている数字があります。それが設備投資です。
Q2の設備投資額は、57.9億ドル。前年同期の23.9億ドルから、142%増加しました。
とんでもない増え方です。
当然、その影響によってフリーキャッシュフローは、▲10.9億ドルとなりました。
数字だけを見ると、「テスラのFCFがマイナスになった」というネガティブ材料に見えます。
ただし、市場予想は▲32.5億ドルだったため、実際のキャッシュフローは予想よりかなり良かったことになります。
営業キャッシュフローは47億ドルと、市場予想約34億ドルを上回りました。
また設備投資も市場予想約67億ドルに対して57.9億ドルでした。
その結果、FCFのマイナス幅は市場が想定していたより大幅に小さくなっています。
ここで重要なのは、「何のために57.9億ドルを使っているのか」です。
工場を増やして単純にEVを大量生産するだけではありません。
AIコンピュート、Cybercab、Robotaxi、Optimus、半導体、バッテリーなど、将来のテスラを作るための設備投資が急増しています。
私自身は、目の前のFCFが10億ドルマイナスだったこと以上に、「将来必要になる技術や生産設備へ、今どれだけ資本を投じているか」を重視しています。
逆にここでAIやロボティクスに資金を投じていない企業に、本当に将来の競争力があるのだろうか、とすら感じています。
自動車販売はQ2過去最高の48万126台

もちろん、現在のテスラを支えている自動車事業も重要です。
Q2の納車台数は、48万126台。
前年同期比25%増となり、Q2として過去最高を記録しました。
自動車売上高についても、205.2億ドルとなり、アナリストコンセンサスの200.5億ドルを上回っています。
車がしっかり売れていること自体は当然ポジティブです。
ただ、私はテスラの将来性を、「将来何台EVを販売できるか」だけで考えていません。
むしろ重要なのは、販売した車から、その後どれだけFSDなどの継続収益を生み出せるのか。
ここだと考えています。
テスラ車が1台売れる。その車のオーナーがFSDを契約する。
さらに将来的にはRobotaxiネットワークへつながる可能性がある。
つまり自動車販売は単なる「車の販売」ではなく、テスラのAI・ソフトウェアサービスへ顧客を取り込む入口になる可能性があります。
その意味で48万台という納車実績は、依然として非常に重要です。
私が今回最も注目した「FSD 148万契約」

そして今回の決算で、私がかなりポジティブに見ているのが、Active FSD Subscriptionsです。
Q2は、148万契約まで増加しました。
前年同期は95万契約だったため、前年比56%増。
さらにQ2はFSDサブスクリプションの純増数が過去最高となっています。
これは非常に重要だと思っています。
なぜならテスラが、自動車を売って一度だけ利益を得る会社から、ソフトウェアによって継続的に収益を得る会社へ変わり始めている
ことを示す数字だからです。
北米ではさらに、新規納車車両の55%超がFSDサブスクリプション付きとなりました。
つまり北米では、新しくテスラを買った人の2人に1人以上がFSDも選択していることになります。
個人的には、車の販売台数以上にこちらの数字を追いかけていきたいと思っています。
FSD契約者が増えれば、
車両販売台数 × FSD装着率 × 月額料金
というストック型の収益モデルが成長していくからです。
そして、このFSD技術そのものがRobotaxiへつながっていきます。
FSD v14 liteをAI3搭載車にも展開

FSDの技術面でも進展がありました。
テスラは米国と韓国のAI3ハードウェア搭載車向けに、FSD v14 liteの提供を開始しました。
AI4向けv14シリーズの運転挙動をAI3のカメラ・コンピュート環境へ適合させたものです。
駐車場所の選択や速度プロファイルだけでなく、合流・分岐、歩行者、信号、車両の割り込みなど、複雑な状況への対応能力も改善されています。
これは既存車両を考えるうえでも重要です。
最新ハードウェアだけでなく、既存のAI3車両でもFSD能力を改善できれば、FSDを販売できる母数そのものを維持できます。
FSDの世界展開も進む

FSDは米国だけの話ではなくなりつつあります
オランダに続いて、リトアニア、エストニア、デンマーク、ベルギーでも追加承認を取得しました。
これらの市場では7月時点で、FSDによる走行距離が5,000万kmを突破しています。
テスラ自身も、FSDが承認された市場ではテスラ車への関心が高まっていると説明しています。
これは私が非常に重要だと思っている部分です。
FSDは単純な追加オプションではなく、「FSDを使いたいからテスラを買う」
という状況を作れる可能性があります。
そうなれば、「車を売るためにFSDを付ける」のではなく、「FSDを売るために車を売る」
というビジネスモデルへ変わっていく可能性があります。Robotaxiは7都市圏でサービス展開
さらにRobotaxiも着実に進んでいます。
現在テスラがサービス展開している主要都市圏は、サンフランシスコ・ベイエリア、オースティン、ダラス、ヒューストン、マイアミ、オーランド、タンパの7都市圏。
このうちサンフランシスコではセーフティドライバー付きですが、テキサスやフロリダでは無監督運行の拡大が進められています。
さらにフェニックスとラスベガスでも展開準備が進められています。
特に7月には、マイアミ・オーランド・タンパで無監督走行サービスを開始。
オースティンでも無監督運行エリアを拡大しました。
Robotaxiが「いつか実現する未来の話」から、少しずつ実際のサービスへ移行していることが分かります。
Cybercabがついに生産開始

そして今回、大きなニュースがもう一つあります。
Robotaxi専用車両として設計された、Cybercabの生産が開始されました。
量産仕様のCybercabによる公道でのエンジニアリングテストもQ2から開始。
さらに7月にはGigafactory Texasの敷地内で、Cybercabによる従業員向け乗車サービスも始まりました。
これもかなり重要だと思っています。
現在のRobotaxiはModel Yなど既存車両を中心に展開しています。
しかしRobotaxi専用に設計されたCybercabが本格投入されれば、Robotaxiの車両コスト、運営コスト、稼働効率
などを大きく改善できる可能性があります。
Robotaxi事業を大規模化するためには、Cybercabの量産は避けて通れません。
その生産がついに始まったという点は、今回の決算の大きなポイントです。
Model S・Xの工場をOptimusへ転換

そしてもう一つ、私が非常に注目しているのがOptimusです。
Fremont Factoryでは、Model SとModel Xの生産ラインを廃止。
その跡地に、Optimusの第1世代生産ラインを設置しています。
テスラは2026年中の生産開始を予定しています。
これは象徴的な動きだと思っています。
テスラ創業初期から存在したModel S・Model Xのラインをなくして、人型ロボットの生産ラインへ転換する。
テスラ自身が、「これからどこへ向かう会社なのか」を示しているようにも見えます。
自動車メーカーとしてのテスラだけを見ていると、この設備投資の意味を見誤る可能性があります。
半導体まで自社製造へ
さらにテスラはオースティンで、半導体工場の建設と設備調達を進めています。
まだ初期段階ですが、テスラはこのプロジェクトについて、
自社製品に必要となるロジックチップやメモリーチップを長期的かつ安定して確保するための重要なプロジェクトだと説明しています。
自動車。
バッテリー。
AIコンピュート。
FSD。
Robotaxi。
Cybercab。
Optimus。
そして半導体。
テスラは少しずつ、AIとロボティクスに必要な技術を垂直統合する企業へ変化しています。
このための設備投資が57.9億ドルまで膨らんでいるわけです。
今回の決算をどう見るか
今回の決算を短期的な利益だけで評価すると、決して良い決算ではありません。
EPSは0.33ドルと予想を大きく下回りました。
営業利益率も1.4%まで低下。
エネルギー事業の利益率も大きく悪化。
FCFも▲10.9億ドルです。
ここだけを見れば、「利益率が急激に悪化している」という評価は正しいと思います。
しかし私は、テスラに投資するうえで最も重要なのは、「なぜ利益が減っているのか」
だと考えています。
需要がなくなって利益が減っているのか。それとも将来の巨大事業を作るために利益を使っているのか。
この2つでは意味が全く違います。
今回のテスラは後者の要素がかなり大きいと私は見ています。
・設備投資は前年比142%増。
・FSD契約者は前年比56%増。
・北米の新規納車の55%超がFSD付き。
・Robotaxiは7都市圏へ拡大。
・Cybercabは生産開始。
・Optimusの生産ラインも建設中。
半導体工場まで作ろうとしています。
目の前の利益を削ってでも、AI・自動運転・ロボティクスへ一気に資本を投入している。これが今のテスラです。
私がテスラで一番見ているもの
私はテスラの将来性を、「年間何百万台の車を販売できる会社になるか」だけでは考えていません。
もちろん、自動車販売は非常に重要です。
目の前のキャッシュフローを生み出し、FSDを利用する車両そのものを増やす必要があるからです。
しかし、その先にあるFSDのサブスクリプション収入、Robotaxiによる継続収入、Optimusの販売
こそが、将来のテスラの企業価値を大きく変える可能性があると考えています。
だからこそ今回の決算では、EPS 0.33ドルだけを見るのではなく、
148万件まで増加したFSDサブスクリプション
Robotaxiの無監督運行拡大
Cybercabの生産開始
Optimus生産設備への投資
AI・半導体への巨額設備投資
を私は重視しています。
短期的には利益率の低下という明確なリスクがあります。
エネルギー事業の収益性悪化も、次回以降しっかり確認する必要があります。
しかし同時に、テスラが「EVメーカー」から「AI・自動運転・ロボティクス企業」へ変わるための投資が、数字として一気に表れてきた決算だったとも言えるのではないでしょうか。
私は今後、「車が何台売れたか」以上に、「その車からFSDという継続収益をどれだけ生み出せるのか」、そしてRobotaxiとOptimusがどこまで実際の売上・利益につながっていくのかを追いかけていきたいと思います。



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